普通日記

働くトリネガ、絵描き修行中につき

治療期間は確認しておこう

プチ波乱万丈な鹿児島滞在、後半の顛末。治療の最終日は事前に確認しておこう。できれば技師さんに!

第2クールは10月17日から2週間くらいと言われていたので、14日間とすると30日が最終日になる。ホテルは30日まで予約済みだが、あまりにギリギリだと心配だったので、鹿児島滞在中に31日まで延泊にした。11月1日、連休前に帰るつもりでいた。順調に治療できていたので、早めに飛行機を予約しようと何気に受付のお嬢さんに「私、30日に終わりますよね」と言ったらば「いえいえ、それはないと思いますよ」と。ヤベー、飛行機チケット予約しなくてよかったー、と騒いだら、気を利かせて早めに診察の予約をしてくれた。先生に「私は2日までですか?」と聞いたら、ニッコリ爽やかに「そうだね、がんばりましょう」というお答え。どうも先生の笑顔には毎度ノックダウンだ。

とかノンキなことを言っている場合ではない。さて困った。快適な法華クラブは1日までは延泊OKだが2日は取れない。3連休、しかも「おはら祭り」という大規模な秋祭り。どこも空いていない。あらやだ、ホテル難民じゃないの。遠くの温泉にでも行っちゃうか。連休は高いな。いっそ九州新幹線で県外とか。雨の予報が出ているので野宿は無理(雨じゃなくても無理)こまめに空室チェックをしていたら、たまたまダブルが出た。割高だが四の五の言っているとマジで野宿(だから無理)ダブルとりあえず確保。

私よりも先に治療を終えて帰るオンコロ友とランチしながら、そんな顛末を嘆いたら、なんとキープしてあるホテルがあると言うじゃないか。とりあえずダブルよりも3000円ほど安い。わざわざホテルまで一緒に行って、フロントで宿泊者の変更をしてもらう。助かった。これで安心して治療が受けられる。どんと来い、ピンポイント照射!

1日は朝9時からの治療だった。明日で終わりですねー、なんて朗らかに言いながら翌日の予約をしてくれる受付のお嬢さん。部屋の掃除があるので、すぐにはホテルに戻れずドトールで朝カフェしていた。少ない友人らに、もうすぐ帰るメールの作成中にオンコロジーから電話が。はて、忘れ物でも?と出てみると「すいませーん、今日で終わりでしたぁ」と・・・。うははははは、こりゃーウケるぜ。まぁ、いいけどね。もう鹿児島滞在も長いんで、ここにきて1日やそこら延びようが縮もうが大したことではない。飛行機だって3日で予約済だもんね。んじゃ、のんびり土産でも買おうとドルフィンポートまで行ってみる。海はいいよ、海。船が見えるのもいい。大きいメカ大好き。

高千穂高原ソフトクリームがおいしいと聞いていたので、桜島を眺めながら食べる。せっかくヒマな日が増えたのだから、やり残した(食べ損ねた)ことをやっておかなくては。

2日はオンコロジーセンターにご挨拶と書類の代金を清算して、外に出たらシティビュー(観光バス)がたまたま来た。何となく乗った。はて、乗ったはいいがどうしようか、と考えながら(本当は考えてない)みんなが降りるから流れで降りてみちゃった仙巌園。夏に来た時は快晴で景色は抜群だったが暑かった。唯一心残りだった両棒餅(じゃんぼもち)を食す。真夏に胴着姿で熱い解説をしてくれた示現流のイケメン君が赤備えだった。連休仕様?端午の節句みたいだけど。

あてずっぽうでも楽しめる鹿児島っていいよね。できればあてずっぽうにならないように、事前の計画とか早めの確認をしたほうがいいけどね。っていうか、きちんと確認しておきましょうね。

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紅芋ソフトと両棒餅(ぢゃんぼもち)

あちこちランチ

鹿児島滞在2週目。ひとりランチ行脚もそろそろネタ切れかと思い始めた頃である。ふと、9月まで同じ時期に治療をしていた彼女がそろそろ鹿児島入りしているのではないかとメールしてみる。当り!ごはんしようと提案する。第1クールで一緒だったみんな、元気だろうか。たぶん元気だな。明るくておしゃべりで、おしゃべりで、おしゃべりで、したたかにしなやかに、意志は強いが情の厚い人たちだもの。UASオンコロジーセンターで知り合った友人たちの印象である。みんなガンなのに愉快な人ばかり。

ランチも2人になるとまた趣向が違ってくる。ひとりで入るのに躊躇していた店に行かれる。まずは寿司。前回は真夏で抗がん剤で痛めつけられた上に放射線だったので、さすがに寿司を食べる勇気はなかった。まぁ、今回だって白血球の値は落ちるのだか、肉より魚派の私はもう限界なのだ。寿司なんていつ以来だ?4月か、そうか4月だ。治療前に行っとけー!とぽんちゃんが新潟まで連れていってくれたのだ。寿司のために県外。海のない所に住んでいると不便よねー。

あちこちのオンコロブログに登場している「喜鶴寿司」はカウンター席を確保すると目の前で握ってもらえる。880円でたっぷり楽しめる。思わず「うまい!」と雄叫びあげるのも致し方あるまい。

翌日は野菜をたっぷり取るべく、レム鹿児島2F「巳八」で。ビュッフェスタイルで好きなものをセイロで蒸してたらふく食べまくる。飲茶ありカレー・パスタあり、デザートまである。一見して健康志向な品揃えだが、食べすぎるのはいかがなものか。いや、あの状況で自制できる女子がいるだろうか。無理!グルメサイトでクーポンをGETしてから行くがよろしい。

ホテルのロビーで治療までの時間調整。そこで友人がバッグから取り出したメモ。そこには何やら細かく書き込まれたタイムテーブルが。「行きたいランチ店リスト」だった。日数が足りなくて~、全部は難しいかな~、とパズルを解くように治療時間とすり合わせている。本人いたって真剣なのだが・・・すまん、ちょっと笑っていいッスか。念のためだが、私たちはガンの治療中である。

そして、これを書いている日の昼ごはんは「いちにぃさん」の黒豚とんかつ定食だったりする。ミルフィーユのように何層にも重ねた黒豚もも肉は柔らかく、余分な脂がないのでさっぱりと食べられる。豚汁がまた野菜たっぷりで量も多い。ごはん半分にしてもらうのを忘れたが、気が付けば完食。しつこいようだがガンの治療中である。

第1クールでは早歩きすれば息切れ、階段3段でグダグダ疲れ果てていたが、第2クールのこの普通っぷりはどうなんだ。折しも食欲の秋が到来中。馬も肥ゆるが自分も肥ゆる。デンジャラスな季節だ。

全国的な傾向なのかは分からないが、鹿児島には自然食とかオーガニックとかマクロビオテックとか、健康食と呼ばれる料理を出す店が多い。城山の地球畑にじのたね、レム鹿児島の隣のキッチンキャベツはそれが売りなのでオンコロ女子の御用達。巳八は蒸し野菜、夜行杯は焼き野菜。マルヤガーデンズ内のカフェやレストランでも何気に五穀米だったり、ハンバーグが豆腐やレンコンだったりする。オサレなカフェ飯に味噌汁がついていることもある。外食ばかりではあるが、心がけひとつで野菜はたっぷり取れるはず。

鹿児島での治療中、食事をする店には困らない。ガイドブックやネットで探すのもいい。入院組の人たちは先輩たちから情報を引き継いでいたりするので聞いてみるのもいい。そんなこんなで「行きたい店リスト」を握りしめて悩む、なんてことにもなるわけだ。

治療期間は長いようで意外とあっという間に過ぎてしまう。神様がくれた休暇。どう過ごすかは自由なのだ。

あれこれ資金繰り「ホテル編」

治療中のホテル宿泊も長期になるので資金繰りも楽ではない。UASオンコロジーセンターは自由診療なので治療費だけで車1台分だったりする。滞在費や食費などの諸経費を含めると、個人差はあれどターボエンジン搭載の軽自動車からプリウスくらいはかかる。私は普通の田舎の事務員なので普通に貧乏だ。都会のキャリアとは立ち位置が違う。正直に言ってしまえば、庶民は保険を使って入院したほうがいいと思う。だけど私はホテルを選択した。

定年退職後の生活や老後の為にセコく貯めていた。年金なんて不透明なものに寄り掛かれない不憫な世代なんだもの。独居老人にはなっても、がんになるとは思っていなかった。しかも5年生存率30%以下は想定外だった。こうなった以上、墓場まで貯金なんぞ持っていったところで意味がない。ないかもしれない老後より、生きてる自分に使っとけ!と思ったわけだ。子供がいたら少しでも残そうと考えたのだろうが、なんつってもね、子なしシングル40代だもの。決して投げやりになっているのではない。自分で稼ぐ。自分で使う。ただそれだけのこと。

まぁ、そうは言っても今回で使い切ってしまったので、預金残高は潔い数字になっている。清々しいくらいだ。万が一、王子様が現れて結婚詐欺なんぞに引っかかっても無い袖は振れない。

万が一よりも少し高い率で、1年くらいで再発しちゃった場合、残念だがUASオンコロジーセンターで治療ができるかも分からない。無い袖は振れないのだ。完治は厳しいが、できれば癌細胞には最低でも10年くらいはおとなしくしていてもらいたい。その間に働いて稼ぐ。手術の後遺症がない分、働きやすい。

さて、本題のホテル編

ホテル選びのポイントはそれぞれだと思うので、特に参考になるような情報発信はできないのだが、あくまでも私感として読み飛ばしてほしい。

UASオンコロジーセンターに事前に相談すると、セントイン、東横イン天文館2、ドーミーインのいずれかを紹介してもらえる。私はのちに入院組から大笑いされることになるのだが、セカンドオピニオン時に植松先生に直接質問した。鹿児島ではグルメや観光を楽しみたいのでホテルがいい。皆さんどうしてますか?とぶっちゃけ聞いてしまった。受付に聞いてみて、と言いつつも、ここは安い、これは無難で普通、温泉付き1ヵ月タイプはウチの通院用に設定されたようなものかな、という感じで、かなり具体的に教えてくださいましたよ。セカオピの貴重な時間を私はいったい何やってたんだ・・・と今ではセルフツッコミしたい。

第1クール 8月19日から9月22日までの宿泊先。

  • 城山観光ホテル  初めての鹿児島記念に1泊
  • ドーミーイン 1ヵ月マンスリー朝食付き 高見馬場
  • レム鹿児島 友人とツイン1泊 天文館
  • 城山観光ホテル レディスプラン ツイン1泊
  • 霧島観光ホテル 霧島温泉 朝夕付 1泊

第2クール 10月15日から11月3日まで

第1クールに関しては治療期間中の宿泊はドーミーインのみ。他は観光。第2クールであちこち転々としているのは、台風で前乗り、後半は治療最終日を確認していなかった為に急きょ延長。連休でプチ難民。

天文館周辺、治療中の宿泊先選びの対象になりそうなホテルのレポートは以下のとおり。

セカンドオピニオン翌日、速攻でドーミーインを予約。ベッドがシモンズ堅め140cmで寝心地抜群。部屋が広く長期滞在でも圧迫感なし。空の冷蔵庫あり。タオル等は毎日交換だが清掃は1週間に1回。ここを気にする人は多いが、私はスーツケース広げっぱなしのズボラなので、むしろ気楽。温泉は無色透明。部屋はシャワーのみ。コインランドリー無料。洗濯物を干すスペースあり。朝食バイキングは品数が多く充実している。ただしマンスリープランじゃないと少し宿泊代が高いんだよね。

第2クールはα館で11泊。早めの予約でかなり安く泊まれる。フロントの人がとても親切で丁寧。部屋は清潔。窓から照国神社の鳥居が見え、通りから少し奥に入っているので騒音もなく落ち着いた場所。オンコロジーセンターに近い。天文館にも行きやすい。おやつ買いすぎる。照明が黄色く暗めなので本を読むのは不向き。空調設備が古いので音が大きい。冷蔵庫が冷えない。真夏の長期滞在はエアコンと冷蔵庫がネックになるかも。備品類は必要最小限。ポットは貸出。安いからね、贅沢言ったらダメだけど不便はない。

ホテル法華クラブは思っていたよりアタリだった。柔らかめ140cmベッドなので、その分だけ床面積が狭くスーツケースを広げると目一杯だが、部屋そのものは狭くない。LEDシーリングライトで明るく、PC作業のしやすそうな机。温泉ではないが大浴場あり。備品、アメニティはそこそこ充実。朝食が良い。野菜がたっぷり取れる。朝から食べすぎる。天文館には少し歩くが高見馬場電停が目の前。コンビニ近い。窓からアミュランや電車通りを眺めるのも悪くない。

レム鹿児島。(シャワーのみ女子2人ツイン)とにかくスタイリッシュ。機能優先ではなくオシャレ仕様。アメニティがピンで留まっていたりシャワールームがスケルトン(笑)1階にタリーズ、2回巳八の蒸しビュッフェは90分食べ放題。やっちまえー!

エースイン。さすがアパ系列。いろんな意味で予想どおり。必要なものは一通り揃っているシンプルなビジネスホテル。窓が開けられない。開くけど隣のビルの壁しか見えない。空調の温度設定ができない。コインランドリーは屋外で駐車場の片隅。庶民的な朝食サービスあり。ホテルは寝るだけ、と割り切る人向きかも。

霧島温泉と城山ぜいたくプランは抜きにして、朝食、コインランドリー、大浴場がある、という条件で決めていた。体調管理の為、朝食は必ず取りたい。平熱が35度台なのでお風呂で温まるのも大事。今回、これ以外に感じたのはシーリングライトがいいってこと。しっとり暗いほうが落ち着きそうなものだが、照明が暗いと気分も暗くなるらしい。穴のあいた靴下をチクチク縫ったりするにもシーリングライトのほうが都合がよい(謎)

鹿児島市内、特に天文館周辺はたくさんのホテルがある。長期滞在になるのでフトコロ具合と自分基準でうまく折り合いをつけるしかない。とはいえ、基本的にはUASオンコロジーセンターで紹介してもらえる3つのホテルは選びやすく、条件としては揃っていると思う。そして以前にも記したが、ホテル滞在中の体調管理は綱渡りだってことを忘れてはいけない。放射線治療にも副作用はある。がんになる前の自分とは違うのだ。

とかナントカ言って、さんざん食べ歩いて食い倒れ鹿児島ツアーを決行したのは誰だ、私だ、道楽三昧。フトコロ具合が寒すぎる。

Φ5の悲劇。靴下にも穴があく

10月も下旬だというのに日中の気温は25度前後。空気が乾燥しているので多少の灰が混ざっていても風が爽やかだ。時々、照射している胸のあたりに突き抜けるような痛みがあったり、肩から首にかけての筋肉にこわばりを感じる。しかし前回のような倦怠感も微熱もない。体調は良い。具合が悪くないので2週目の血液検査を忘れてしまった。正しくは、食べ歩きに忙しくてそれどころじゃなく・・・(すいません、すいません)白血球が減少した時の、あの説明しがたいだるさを身体が覚えている。たぶん大丈夫。だと思う。つーか、もう治療しちゃってるし。んはははは、笑っとけ、笑っとけ。元気ならいいじゃないか。

治療中は、技師さんたちがテキパキとマシンを操作する間、台の上に乗ってじっと動かずにいるだけである。いつもどおり何事もなく治療を終え、技師さんに「はい、お疲れさまでした」と起してもらう。靴をはく時に、ふと見てはならぬものを見てしまった。つま先である。紺のしましま靴下の先に、ナチュラルな肌色がチラリ。およそ直径5ミリ。

こここここれは、もしや、穴あいてますか。穴ッスね。まごうことなき穴ですね。うぎゃーーーーー、穴あいた靴下で治療を受けてたのか。これを技師さんが見ていないはずがなく・・・。

もし治療前に発覚していたなら、私はきっと自虐ネタとして笑いを取って一件落着させてから治療に挑んだはず。しかし事はすでに終え、走る技師さんは次の人を迎えるべくスタンバイしている。もはや手遅れだった。なんという失態。せっかくのネタを・・・ではなく、乙女の恥じらいも吹っ飛んだ。穴があるなら入ってやってもいい(なぜ上から目線?)

中耳炎になる。鼓膜に穴があく。

季節の変わり目特有の寒暖差で、持病の鼻炎が悪化していた。飛行機に乗ったら耳が詰まった。水が耳に入って出てこない感じ。水中生活3日はガマンした。4日目でさすがに陸に上がりたくなった。鼻炎からくる中耳炎に違いない。抗生物質を処方されるはずだが、放射線治療中の自分が服用していいのか判断がつかない。オンコロジーセンターに確認したところ、外用薬はOKだが内服はNOとのこと。やっぱりか・・・。さて副鼻腔炎も中耳炎も外用薬なんてあったっけ?と不安になるが、とにかく耳の奥から深海のゴワゴワ音がするのはもう勘弁だ。もしかしたらネブライザーでしばらく通えと言われるかもと覚悟して、土日もやっている耳鼻科に行ってみる。滲出性中耳炎だそうで。これ、青っ鼻たらした子供がよくなっちゃうヤツ・・・。内服がダメならば、ということで、鼓膜に穴をあけて溜まった浸出液を吸い出され、5日目にして海中から脱出成功。鼓膜って穴あけても平気なのか(驚)台風直撃に続いて中耳炎。こんな小ネタいらないんだけど。

中耳炎にはなったが、他には特に問題なく元気である。上着なしで、歩くと少し汗ばむくらいの鹿児島の気候はとても過ごしやすい。

第2クール、まずは脇で1週間、胸で1週間の予定でピンポイント照射しましょう、と言われている。ピンポイントになると身体への影響も強く出ることがあるらしい。油断してはいけないのだが、抗がん剤の影響が薄れてきたこともあり、うっかりガシガシ歩いてしまう。動悸や息切れはまだ少しある。無理せずにホテルで休めばよいのだが、今回は安さで決めたのでショボい。あまり帰りたくない。フロントの人は親切で部屋は清潔だから文句は言えないのだが、前回滞在のホテルとは全然レベルが違うわけで・・・。

これを書いているのは月曜日。図書館も美術館も博物館も休みだ。行くところがなくて天文館のスタバに居座っている。仕事もせずに時間を持て余している。もし標準治療をそのまま続けていたら、今頃はどうしていただろう。TCの副作用でクタクタになりながら、そろそろ手術の予定が決まる時期だったかもしれない。

妹は最初から抗がん剤の治療には賛成できないと言っていたが、私は受け入れた。それが当然だから、という理由ではなく、少なくともネットや本で調べて納得できることがあったからだ。結果的には途中で逃げたのだけれど。この選択が正解なのかは分からない。後悔していない、とも言いきれない。再発や転移が出たら後悔するのかもしれない。これは抗がん剤と手術のフルコースをこなしていても同じなのだから、どっちが正解なのかは本当にわからない。

ただ、抗がん剤をやっていたら中耳炎どころの不調じゃ済んでいない。月曜の昼間っからスタバでソイラテなんか飲んでいない。オンコロジーセンターの治療を選択するとは、こういうことなのだ。治療費の中には、こういう時間も含まれている。

台風前夜、食欲倍増

第2クールなのである。9月の最後の診察で次回は10月17日からと言われていたので、霧島温泉でご馳走を食べて温泉に浸かってテレビで海猿を見ながらサクっと早割航空チケットを取っておいた。普段から詰めの甘い自分だが、今回は準備万端だな、と思っていた。ところが季節はずれの台風で、しかも10年ぶりの大型とかゆって、日本列島縦断してんじゃねーよ、ばーか、ばーか。前回は桜島の噴火、今回は大型台風。なかなか派手な演出ですこと。

予定変更で1日早く鹿児島入り。家を出るときは寒かったのでコーデュロイの上着だったが、東京駅は湿度が高くてすでに暑い。モノレールから見る空は灰色の重い雲。羽田空港に着く頃には雨が降り出していた。

鹿児島空港着、晴れ。どっちみちコーデュロイの上着は暑い。気温差で鼻炎が悪化しているところに飛行機なんて乗ったものだから、耳がモワっと詰まっりっぱなし。脳みそ崩れて耳から出たか?

まだ治療前なので鹿児島中央駅西口のホテルを取った。荷物を放り込んで、小腹を満たすべくアミュ地下徘徊。そば屋でガッツリ満腹。小腹じゃないし。まだ4時だし。食欲の秋だし!

あちこちウロついて、映画でも見ちゃおっかな~とミッテ10に向かう途中で思いとどまる。朝の7時に家を出て、人混みかき分けて乗り換えを何回もして鹿児島着なのだ。これでも一応乳がんステージ3だから。休もう、休もう、おやつ買ってホテルに帰る。おやつは忘れない。レンコンとひじきのサラダ、コールスローがおやつに分類されるかは疑問だが。1ヵ月ぶりに城山ストアーのお惣菜コーナーを見たら素通りできなかった。

ニュースでは台風の警戒情報を頻繁にやっている。余分な出費はあっても早く来てよかった。しかし余分な脂肪はいかがなものかと。白血球の数値より血糖値を気にするようでは本末転倒なのだ。

 

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ホテルの窓から見えた夕暮れのアミュラン。

ビジネスホテルで1ヵ月

治療期間中はUASオンコロジーセンターで提携の病院を紹介してもらえる。入院は保険が使える。自分が40歳になった記念に女性特約を追加していたので、個室の差額も支払える目途はあった。保険の見直しの際に高額先進医療特約もつけた。なのに「がん特約」は付けていない。使えねー。読み甘いー。昨今のがん治療は通院が基本。できれば通院特約も必要ですわよ、奥さんッッッ!

標準治療を離脱した私には関係ないけどねーーーー。

 で、保険の恩恵に預かることなく、なぜホテル宿泊を選んだのかといえば、私の場合は治療が目的であると同時に、仕事や母親との関係や距離感など「優しいしがらみ」を物理的に断ち切って、今まで良くも悪くも積み上げてきたもの、溜め込んできたものを一旦リセットする必要があると思ったからだ。ひとりで過ごす時間=ホテルを選択することに迷いはなかった。抗がん剤1回目で4日間の入院をした。気持ちが病人になっていくと感じたことも影響している。この辺りの話はまた別の機会に。

 

まずはホテル生活の「良かったこと」

  • 外出、食事、入浴の時間を制限されない。
  • コインランドリー完備であれば必要最小限の衣類で十分。
  • ゴミ処理、清掃、タオル類の交換など衛生的な問題はない。
  • 騒音に悩まされることなく夜はしっかり眠れる。
  • 冷房など空調設定が自分の体調に合わせられる。
  • 眉毛、頭髪なんかなくても、ひとりだから平気だぜ。
  • カードがなくてもテレビ見放題。(大河ドラマと心の恋人織田裕二ドラマは欠かせない!)

 「イマイチなこと」

  • 体調が悪くても一人で対処しなければならない不安。
  • 生活のリズムが不規則になりがち。自己管理が必要。
  • 情報交換の場が少ない。
  • 引きこもる。
  • 朝から1日の食事の心配ばっかり。
  • 外食、買い食いなので食費がかかる。
  • なんといっても宿泊代。私の場合は10万超えてますぜ、大金ですぜ。

 朝食付きにしたら日々のリズムが作りやすい。なにしろ時間が決まっているのだから。食事に関しては1日1000円を目安として1週間で7000円を自分上限額と設定したのだが、序盤ですでに曖昧になった。暴飲暴食しなけりゃそんなに嵩まない。フレッセ城山ストアーの量り売りのお惣菜、山形屋やアミュ地下には500円以内のお弁当が豊富。300円握ってはなまるうどん、500円掴んで菓々子横丁ランチ。さつま揚げの単品買いで小腹を満たすなど、ひとりごはん節約術は工夫次第。これ、結構楽しい。その代り、みんなでランチな時はデザート追加もやぶさかではございませんわよ!

 元々、ひとり行動にあまり抵抗がなく、ラーメン屋のカウンターも平気だ。どうでもいい事をダラダラ考えている時間も好きだ。一人でいる時間は好きだが、孤独が好きってわけじゃない。だからオンコロジーセンターでの雰囲気には助けられた。

 もしも、入院するかホテルやウィークリーマンションなどを利用するかで迷ったら、副作用や病状、慣れない土地での生活環境の変化による体調不良がある、ということを考えておいたほうがいい。

週に一度の血液検査

放射線治療の副作用として白血球の値が下がる場合がある。下がりすぎると治療は一旦保留になる。

ホテル宿泊の場合、週に1度は向いの病院へ血液検査をしに行く。私の場合、最初にぶっ倒れているので看護師さんには覚えてもらっているようだ。ぶっ倒れていなくても、別の意味で「やっかいな患者」っぷりを発揮しているのだが・・・。

以前にも書いたが、私の血管は細い。ぽっちゃり脂肪に埋もれて見えない。さらに両腕に血管痛で使えないのが1本ずつ。

明るくて親切な看護師さんは、世間話やグルメの話しで楽しい雰囲気を作ってくれるのだが、いかんせん私の血管は面倒くさい。毎回のように手こずらせてしまう。

ごめんねー、ここ痛いねー、と鹿児島の柔らかいリズムで言われるたびに、お手数かけます~~、と申し訳なく思う。

3回目に行った時に、肩の関節をぐりぐり回しながら、ヨシ!ちょっと気持ちを落ち着かせるからね!!と言われた。ちょっとウケた。ていうか、マジ笑った。もう、ほんと、そんな気合い入れてもらってスイマセン~~~。

 

ほんの1か月前までは総合病院で流れ作業のような採血をされていた。これは硬くて使えないな、などとボソリとつぶやきながら指先でムチムチな腕から細い血管を探り当て、はいチクっとしますよー、と言い終らないうちにチクっとされ、イスから腰を浮かせると同時に次の人の番号を呼ぶという流されっぷり。

それに比べたら、何度かの失敗の後に痛い手の甲から採血されてしまう鹿児島の病院ではガマンガマンなのだが、なぜか不幸な患者気分にはならない。

10月に第2クールの治療が始まる。またこの病院にお世話になるのだろうか。その時はまたヨロシクなのだ。

台風上陸、オフ会に行く

数少ない地元の友人から「もう長袖じゃないと肌寒いよ」とメールが届く。だからどこの国の話だ?

9月3日、オフ会は台風直撃で暴風雨なんてもんじゃない。屋根の下にいても水しぶきが飛んでくる。四方八方からの雨粒攻撃。すごいぞ、すごいぞ、台風。びしょ濡れで大変な目にあっているのだが、なぜかテンション上がる。バカである。

8月末に締切ギリギリで参加表明したオフ会はドルフィンポートのオシャレなイタリアンレストランで。食事もたっぷり、トークもたっぷり。女子8人集まったらね、そりゃぶっちゃけトーク満載だよね。私はホテル泊なので、いろんな人のいろんな話を聞ける機会は本当に貴重なのだ。治療中の体調について、治療を終えてからのこと、金銭的な問題、家族や仕事のこと、再発や転移。体験者ならわかること、体験者でなければわからないこと。内容はハードだが、なぜか誰もが笑いながら話している。不幸すぎて笑うしかないよね、みたいな捨て身の笑いではない。話せる、聞ける、聞いてくれる、分かってくれる、という安心感なのだろうか。それだけじゃないな、単純に、たらふく食べて飲んで、笑ってしゃべって、この時間を存分に楽しんだ感じだ。充実した愉快な時間だった。

オフ会の翌日、診察の時に血液検査の結果を見せてもらう。白血球、増えてんじゃん。ほらねー、ほらねー、しゃべると元気になるって数値でも出てるわけだよ。

とはいえ、抗がん剤後の放射線治療中の身。万全ではない。微熱が出たり引っ込んだり、疲れたりだるかったりする日もある。しかし、同じような症状の人はまわりにもいて、それは「よくあること」なのだと今は知っている。慎重に自分の体調を観察することは大切だが、気にしなくていいことは気にしない。気にしなくていいと知ったことは大きい。私はここでもたくさんの人に助けてもらっている。ありがとう。

 

私は基本的に人見知りなのである。しかしオンコロジーセンターに行ったら、とりあえず「こんにちは」と言えば、ボンヤリしていてもいつの間にか輪に入れる。職場などにありがちな、女同士の後ろ向きで手をつなぐようなブラックな要素は感じられない。生きる事、いかに幸せに暮らしていくかを本気で考え、標準治療を蹴ってきた人たちが集まっているのだ。同類相哀れむのではなく、同志という感じかもしれない。

ウェルカムな空間がそこにある。

ネットだけでは得られないリアルかつ愉快な情報は本当に役に立つ。それ以上に自分を元気にする。

 

念のためだが、治療の選択をすすめているのではない。それは別の次元の話。

台風前に維新ふるさと館に行く

9月初旬。台風が来ると、しかも九州直撃だとニュースで盛んにやっている。一晩中ずっと雷が鳴りっぱなしで、まだ使い方のわからないiPhoneは緊急災害速報をガンガン飛ばしてくる。そうか、来るのか台風。テレビでしか見たことのない南国の台風を初体験してしまうのだな。不謹慎で申し訳ない。

小雨になった頃を見計らい、かつて妹たち家族が暮らしていた甲突川沿いを歩いてみる。スタートラインには大久保利通像がドーン。明治の新政府にとってどれだけ重要な働きをしたかは承知しているが、どうもね、鼻につくんだな。何やっても優秀なエリートタイプっていうか・・・。実際は政治のために私財を投げ打って借金まみれだったと死後に分かるほどの実直な人だったようだ。そういう不器用さを表に出さない、というか出せないエリートっぷりがねー、モテない原因じゃないかと。その点、西郷どんは不器用さ思いっきり出ちゃってるからね。あにきー!みたいな。犬好きだし(関係ない)カリスマ性の違いかしらねー。たまにいるよね、すごい人なのにモテない人。石田三成とかね。体育会系ノリの福島正則とか、城建築マニアの加藤清正のほうがモテ系だもの。あくまでも私感だから反論意見は却下。

維新ふるさと館、一度は行ってみるがよろしい。子供だましだとバカにしてはいけない。意外とおもちろい。ここで勉強すると鹿児島中央駅にそびえ立つ銅像の皆さんが、どれだけすごい人たちだったかってのが理解できる。開国前の江戸時代に、海外に留学生を送った島津の殿様の先見の明もすばらしいが、実際に命がけで留学した若者たちのドラマもしかり。今では誰でも知っている大企業の始祖だったりする。

加治屋町では多くの幕末の偉人が育ったところだ。鹿児島すごい。そして台風の威力もハンパなかった。1秒で傘がぶっ壊れるというありさまを初体験した。鹿児島すごい。

 

まったく余談だが、大久保利通西郷隆盛も、当時の日本人としてはかなり大柄だったようだ。そして坂本龍馬も大きかったはず。じゃー、勝海舟はどうだったのだろうか。幕臣でありながら徳川慶喜とすったもんだしつつ双方まるく納めた偉いおっさん。でかくて熱い若造らと対峙していた勝海舟が普通サイズもしくは小柄だったらと想像するとちょっと面白い。どうでもいいことほど面白い。