普通日記

働くトリネガ、絵描き修行中につき

Φ5の悲劇。靴下にも穴があく

10月も下旬だというのに日中の気温は25度前後。空気が乾燥しているので多少の灰が混ざっていても風が爽やかだ。時々、照射している胸のあたりに突き抜けるような痛みがあったり、肩から首にかけての筋肉にこわばりを感じる。しかし前回のような倦怠感も微熱もない。体調は良い。具合が悪くないので2週目の血液検査を忘れてしまった。正しくは、食べ歩きに忙しくてそれどころじゃなく・・・(すいません、すいません)白血球が減少した時の、あの説明しがたいだるさを身体が覚えている。たぶん大丈夫。だと思う。つーか、もう治療しちゃってるし。んはははは、笑っとけ、笑っとけ。元気ならいいじゃないか。

治療中は、技師さんたちがテキパキとマシンを操作する間、台の上に乗ってじっと動かずにいるだけである。いつもどおり何事もなく治療を終え、技師さんに「はい、お疲れさまでした」と起してもらう。靴をはく時に、ふと見てはならぬものを見てしまった。つま先である。紺のしましま靴下の先に、ナチュラルな肌色がチラリ。およそ直径5ミリ。

こここここれは、もしや、穴あいてますか。穴ッスね。まごうことなき穴ですね。うぎゃーーーーー、穴あいた靴下で治療を受けてたのか。これを技師さんが見ていないはずがなく・・・。

もし治療前に発覚していたなら、私はきっと自虐ネタとして笑いを取って一件落着させてから治療に挑んだはず。しかし事はすでに終え、走る技師さんは次の人を迎えるべくスタンバイしている。もはや手遅れだった。なんという失態。せっかくのネタを・・・ではなく、乙女の恥じらいも吹っ飛んだ。穴があるなら入ってやってもいい(なぜ上から目線?)

老化現象はじまる

もしかしてホットフラッシュ?まさかのホットフラッシュ?やっぱりホットフラッシュ・・・。ネロと友達パトラッシュ。ルーベンスの絵を図書館で調べて、えー、こんなムチムチ?とショックを受けた記憶が。ネロ、まさかショックで? ごめんね、バカで。

どうやら更年期障害のスイッチが入った気配。齢46にして、ぼちぼち在庫も少なくなったであろう卵子が抗がん剤によって全滅したと思われる。もともと基礎代謝が悪い冷え性なので汗が出ない。それが最近、妙に顔に汗が噴き出るようになった。フーっと顔が熱くなりスーっと熱が引いていく。寄せては返す波のようなほてり。まさかこの食欲はホルモンバランスが崩れたからか?いかん、またしてもホルモンバランスによる肥満ステスル攻撃だったか。トリプルネガティブはホルモン治療ができない。なので更年期障害と同じような副作用は無縁だと思っていた。しかし本チャンが来たちゃったんだね。やはり抗がん剤が引き金か。こんなところに伏兵がー。FECばかやろー。

髪はしぶとく落ち武者状態であったが、7月25日の最後のFEC(赤い衰弱!)投与後には波平さんかオバQかという数えられる程の髪が残っているだけだった。9月のある日、顔を洗った時に懐かしくも切ない違和感を覚える。あごにひげが1本生えていた。この頃はポヨポヨと頼りなげなまつ毛がずいぶんな勢いで抜けていたので、まだ脱毛は続いていると思っていた。

先に説明をすると、抗がん剤による脱毛は全身のあらゆる体毛が抜ける。個人差はあるが、頭髪はもちろんのこと、まつげ、鼻毛、顔の産毛すら抜ける。

ひげ発見は事件だ。こいつがいるということは、別の場所にも息を吹き返したやつらが存在していてもおかしくはない。ホテルの姿見の前で捜索開始。頭をさわるとザラザラしていた。鼻の中にも充実した世界が。そして眉毛がボーボーになっていた。なぜ気づかなかったのだ。大慌てで天文館の100均に走って眉を整えるべくカミソリを買った。いくら鹿児島だからって西郷どんとお揃いにしておくわけにはいかない。

第1クールを終えて10月初旬。髪は海老蔵くらいになった。そして10月下旬には1センチ程にはなっている。残念なのは白髪が多いことだ。基本的に濃いぃ顔なので、坊主頭はイケてると思う。デミ・ムーア気取りでウィッグを早々に卒業したいのだが、染められるまではもう少し時間が必要かもしれない。

爪は抗がん剤4回分の白い筋が入り、表面がささくれて薄くなっている。ホホバオイルでマッサージをしているが、これからの乾燥の季節には割れて大変かもしれない。爪が弱くなっていると指先に力が入らないので想像以上に不便だ。蓋が開かな~い、あけてくださぁ~い、と可愛く言えるだろうか。がんばる。

治療が進むとともに湿疹まみれ。これはオンコロ友に聞いたところ、放射線治療は血行が悪くなるのでアレルギー体質の人は出やすくなるとのこと。広範囲なのでステロイドではなく乾燥肌用のメンソレータムかゆみ止めでしのいでいる。ふと注意書きを読めば、老人性乾皮症とある。老人性・・・。見なかったことにする。

ろくすっぽ化粧もせずに真夏の鹿児島をうろついていた夏。四十路のお肌に良いはずがない。顔だけエステに行こうかな。放射線バリバリ照射しているからデコルテなんかやったら骨折するかもな。やらないけどね。がん細胞がリンパに乗って飛んだらヤダ。

年を重ねるのは良いが老け込むのはいやだ。がんばる。

それよりも、この先も年を重ねられるようにがんばれよ、自分

中耳炎になる。鼓膜に穴があく。

季節の変わり目特有の寒暖差で、持病の鼻炎が悪化していた。飛行機に乗ったら耳が詰まった。水が耳に入って出てこない感じ。水中生活3日はガマンした。4日目でさすがに陸に上がりたくなった。鼻炎からくる中耳炎に違いない。抗生物質を処方されるはずだが、放射線治療中の自分が服用していいのか判断がつかない。オンコロジーセンターに確認したところ、外用薬はOKだが内服はNOとのこと。やっぱりか・・・。さて副鼻腔炎も中耳炎も外用薬なんてあったっけ?と不安になるが、とにかく耳の奥から深海のゴワゴワ音がするのはもう勘弁だ。もしかしたらネブライザーでしばらく通えと言われるかもと覚悟して、土日もやっている耳鼻科に行ってみる。滲出性中耳炎だそうで。これ、青っ鼻たらした子供がよくなっちゃうヤツ・・・。内服がダメならば、ということで、鼓膜に穴をあけて溜まった浸出液を吸い出され、5日目にして海中から脱出成功。鼓膜って穴あけても平気なのか(驚)台風直撃に続いて中耳炎。こんな小ネタいらないんだけど。

中耳炎にはなったが、他には特に問題なく元気である。上着なしで、歩くと少し汗ばむくらいの鹿児島の気候はとても過ごしやすい。

第2クール、まずは脇で1週間、胸で1週間の予定でピンポイント照射しましょう、と言われている。ピンポイントになると身体への影響も強く出ることがあるらしい。油断してはいけないのだが、抗がん剤の影響が薄れてきたこともあり、うっかりガシガシ歩いてしまう。動悸や息切れはまだ少しある。無理せずにホテルで休めばよいのだが、今回は安さで決めたのでショボい。あまり帰りたくない。フロントの人は親切で部屋は清潔だから文句は言えないのだが、前回滞在のホテルとは全然レベルが違うわけで・・・。

これを書いているのは月曜日。図書館も美術館も博物館も休みだ。行くところがなくて天文館のスタバに居座っている。仕事もせずに時間を持て余している。もし標準治療をそのまま続けていたら、今頃はどうしていただろう。TCの副作用でクタクタになりながら、そろそろ手術の予定が決まる時期だったかもしれない。

妹は最初から抗がん剤の治療には賛成できないと言っていたが、私は受け入れた。それが当然だから、という理由ではなく、少なくともネットや本で調べて納得できることがあったからだ。結果的には途中で逃げたのだけれど。この選択が正解なのかは分からない。後悔していない、とも言いきれない。再発や転移が出たら後悔するのかもしれない。これは抗がん剤と手術のフルコースをこなしていても同じなのだから、どっちが正解なのかは本当にわからない。

ただ、抗がん剤をやっていたら中耳炎どころの不調じゃ済んでいない。月曜の昼間っからスタバでソイラテなんか飲んでいない。オンコロジーセンターの治療を選択するとは、こういうことなのだ。治療費の中には、こういう時間も含まれている。

台風前夜、食欲倍増

第2クールなのである。9月の最後の診察で次回は10月17日からと言われていたので、霧島温泉でご馳走を食べて温泉に浸かってテレビで海猿を見ながらサクっと早割航空チケットを取っておいた。普段から詰めの甘い自分だが、今回は準備万端だな、と思っていた。ところが季節はずれの台風で、しかも10年ぶりの大型とかゆって、日本列島縦断してんじゃねーよ、ばーか、ばーか。前回は桜島の噴火、今回は大型台風。なかなか派手な演出ですこと。

予定変更で1日早く鹿児島入り。家を出るときは寒かったのでコーデュロイの上着だったが、東京駅は湿度が高くてすでに暑い。モノレールから見る空は灰色の重い雲。羽田空港に着く頃には雨が降り出していた。

鹿児島空港着、晴れ。どっちみちコーデュロイの上着は暑い。気温差で鼻炎が悪化しているところに飛行機なんて乗ったものだから、耳がモワっと詰まっりっぱなし。脳みそ崩れて耳から出たか?

まだ治療前なので鹿児島中央駅西口のホテルを取った。荷物を放り込んで、小腹を満たすべくアミュ地下徘徊。そば屋でガッツリ満腹。小腹じゃないし。まだ4時だし。食欲の秋だし!

あちこちウロついて、映画でも見ちゃおっかな~とミッテ10に向かう途中で思いとどまる。朝の7時に家を出て、人混みかき分けて乗り換えを何回もして鹿児島着なのだ。これでも一応乳がんステージ3だから。休もう、休もう、おやつ買ってホテルに帰る。おやつは忘れない。レンコンとひじきのサラダ、コールスローがおやつに分類されるかは疑問だが。1ヵ月ぶりに城山ストアーのお惣菜コーナーを見たら素通りできなかった。

ニュースでは台風の警戒情報を頻繁にやっている。余分な出費はあっても早く来てよかった。しかし余分な脂肪はいかがなものかと。白血球の数値より血糖値を気にするようでは本末転倒なのだ。

 

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ホテルの窓から見えた夕暮れのアミュラン。

鹿児島LIFE、一段落

小雨の降る11月3日の鹿児島。予定どおり、まぁ、いろいろすったもんだしながら予定どおりに治療を終えて帰ってきました。顛末はまたあらためて。

 

下界は雨でも上空は晴れ。ちょっと宇宙の波打ち際のような。

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ハートマークがかわいい。

 

鹿児島2回目

前回の治療を終えた時点で、今月16日の格安の航空チケットを予約してあったのだが、台風直撃の予報でキャンセル。1日早く出発することにした。桜島の噴火どころの話じゃない。なんで10月に台風?つーか、すんごい寒いのに台風?

しばらくの間、更新しません。

最近のことなど少々

生きていく上で別に知らなくてもいいと思うのよね、っていうか、それはいつ役に立つの?という知識をもんのすごく豊富に持っている友人からメールが届いた。

勝海舟の身長は5尺、約150cm余り。当時の日本人としては普通だったんですってよ。さすがだ。一応カテゴリーとしたら乳がん闘病記に含まれるであろうこのブログで、ここに引っかかるとは。惚れる。惚れるぜ。

大柄な若者を相手にがんばる小さいおっさん。勝海舟にまつわる本を読みたくなった。

 

会社の先輩女史が夕食会を計画してくれた。久しぶりに会社の話を聞いたら、かつてのメリハリありすぎな事務員生活を思い出した。私も毒吐いてたよなー。ここじゃ書けない毒、吐きまくってゲラゲラ笑ってたんだよな。

 

鹿児島滞在記、いまだ9月上旬の記録で滞っている。もはやどうでもいいかと思っていたり・・・。10月17日から第2クールの治療のため、鹿児島再上陸の予定。噴火すんなよ、桜島。

9月17日に治療を終え、とっとと帰ればいいものを、ぽんちゃん合流で豪遊。1ヵ月慣れ親しんだ天文館でうなぎを喰らい、西郷どん終焉の地である城山に1泊、龍馬新婚旅行の霧島温泉に1泊。帰ったのは22日。がん患者の風上にも置けない無謀っぷり。自画自賛。バカですか。バカは風邪ひかないけどガンにはなるので要注意。

 

オンコロジーセンターで皮膚疾患に備えてお持ち帰り消毒セットを受け取る。使い方を説明してもらい、予測される症状も聞く。家に帰ってからは疲れが出て体調が不安定になりがち。1週間くらいは無理せずに十分な休息を取りましょう、と言われていたので、意気揚々と寝たきり生活に突入する。3日で飽きる。

スーツケースの荷物を片付け、洗濯をして掃除をした。やはり疲れる。息切れもする。疲れるが運動はしていないので眠りが浅い。再度、寝たきり生活を送ることにする。やっぱり3日で飽きる。

湿疹や鼻炎などアレルギー症状が一通り出るが、それも2週間ほど過ぎれば落ち着いてきた。さて、体調が良くなるにつれヒマを持て余すようになる。録画したまま見ていなかったドラマや映画をイッキに見たり、食事療法のレシピ本を眺めたりして過ごす。元々引きこもりな性分なので外出しなくても平気なのだが、さすがに脳みそダルダルになってくる。

じゃ、何をしようかと思いつくのは絵描き修行なのだ。絵描き部屋を掃除した。イーゼルに去年の出品作を乗せてみた。駄作で心が折れる。これは加筆レベルじゃ済まないだろうな。来年は出品できるだろうか。出品の為の制作はストレスだ。気力も体力も負荷がかかる。締切もある。だけど、あの緊張感を手放せないと思う。

FECの後に予定されていたTCを蹴ったのは指先にマヒが出たら細密な作業ができなくなると思ったからだ。手術を拒否したのも、腕や手に後遺症が出たら繊細な表現ができなくなると思ったからだ。描けなくなったら、つまらないじゃないか。

ビジネスホテルで1ヵ月

治療期間中はUASオンコロジーセンターで提携の病院を紹介してもらえる。入院は保険が使える。自分が40歳になった記念に女性特約を追加していたので、個室の差額も支払える目途はあった。保険の見直しの際に高額先進医療特約もつけた。なのに「がん特約」は付けていない。使えねー。読み甘いー。昨今のがん治療は通院が基本。できれば通院特約も必要ですわよ、奥さんッッッ!

標準治療を離脱した私には関係ないけどねーーーー。

 で、保険の恩恵に預かることなく、なぜホテル宿泊を選んだのかといえば、私の場合は治療が目的であると同時に、仕事や母親との関係や距離感など「優しいしがらみ」を物理的に断ち切って、今まで良くも悪くも積み上げてきたもの、溜め込んできたものを一旦リセットする必要があると思ったからだ。ひとりで過ごす時間=ホテルを選択することに迷いはなかった。抗がん剤1回目で4日間の入院をした。気持ちが病人になっていくと感じたことも影響している。この辺りの話はまた別の機会に。

 

まずはホテル生活の「良かったこと」

  • 外出、食事、入浴の時間を制限されない。
  • コインランドリー完備であれば必要最小限の衣類で十分。
  • ゴミ処理、清掃、タオル類の交換など衛生的な問題はない。
  • 騒音に悩まされることなく夜はしっかり眠れる。
  • 冷房など空調設定が自分の体調に合わせられる。
  • 眉毛、頭髪なんかなくても、ひとりだから平気だぜ。
  • カードがなくてもテレビ見放題。(大河ドラマと心の恋人織田裕二ドラマは欠かせない!)

 「イマイチなこと」

  • 体調が悪くても一人で対処しなければならない不安。
  • 生活のリズムが不規則になりがち。自己管理が必要。
  • 情報交換の場が少ない。
  • 引きこもる。
  • 朝から1日の食事の心配ばっかり。
  • 外食、買い食いなので食費がかかる。
  • なんといっても宿泊代。私の場合は10万超えてますぜ、大金ですぜ。

 朝食付きにしたら日々のリズムが作りやすい。なにしろ時間が決まっているのだから。食事に関しては1日1000円を目安として1週間で7000円を自分上限額と設定したのだが、序盤ですでに曖昧になった。暴飲暴食しなけりゃそんなに嵩まない。フレッセ城山ストアーの量り売りのお惣菜、山形屋やアミュ地下には500円以内のお弁当が豊富。300円握ってはなまるうどん、500円掴んで菓々子横丁ランチ。さつま揚げの単品買いで小腹を満たすなど、ひとりごはん節約術は工夫次第。これ、結構楽しい。その代り、みんなでランチな時はデザート追加もやぶさかではございませんわよ!

 元々、ひとり行動にあまり抵抗がなく、ラーメン屋のカウンターも平気だ。どうでもいい事をダラダラ考えている時間も好きだ。一人でいる時間は好きだが、孤独が好きってわけじゃない。だからオンコロジーセンターでの雰囲気には助けられた。

 もしも、入院するかホテルやウィークリーマンションなどを利用するかで迷ったら、副作用や病状、慣れない土地での生活環境の変化による体調不良がある、ということを考えておいたほうがいい。

週に一度の血液検査

放射線治療の副作用として白血球の値が下がる場合がある。下がりすぎると治療は一旦保留になる。

ホテル宿泊の場合、週に1度は向いの病院へ血液検査をしに行く。私の場合、最初にぶっ倒れているので看護師さんには覚えてもらっているようだ。ぶっ倒れていなくても、別の意味で「やっかいな患者」っぷりを発揮しているのだが・・・。

以前にも書いたが、私の血管は細い。ぽっちゃり脂肪に埋もれて見えない。さらに両腕に血管痛で使えないのが1本ずつ。

明るくて親切な看護師さんは、世間話やグルメの話しで楽しい雰囲気を作ってくれるのだが、いかんせん私の血管は面倒くさい。毎回のように手こずらせてしまう。

ごめんねー、ここ痛いねー、と鹿児島の柔らかいリズムで言われるたびに、お手数かけます~~、と申し訳なく思う。

3回目に行った時に、肩の関節をぐりぐり回しながら、ヨシ!ちょっと気持ちを落ち着かせるからね!!と言われた。ちょっとウケた。ていうか、マジ笑った。もう、ほんと、そんな気合い入れてもらってスイマセン~~~。

 

ほんの1か月前までは総合病院で流れ作業のような採血をされていた。これは硬くて使えないな、などとボソリとつぶやきながら指先でムチムチな腕から細い血管を探り当て、はいチクっとしますよー、と言い終らないうちにチクっとされ、イスから腰を浮かせると同時に次の人の番号を呼ぶという流されっぷり。

それに比べたら、何度かの失敗の後に痛い手の甲から採血されてしまう鹿児島の病院ではガマンガマンなのだが、なぜか不幸な患者気分にはならない。

10月に第2クールの治療が始まる。またこの病院にお世話になるのだろうか。その時はまたヨロシクなのだ。

台風上陸、オフ会に行く

数少ない地元の友人から「もう長袖じゃないと肌寒いよ」とメールが届く。だからどこの国の話だ?

9月3日、オフ会は台風直撃で暴風雨なんてもんじゃない。屋根の下にいても水しぶきが飛んでくる。四方八方からの雨粒攻撃。すごいぞ、すごいぞ、台風。びしょ濡れで大変な目にあっているのだが、なぜかテンション上がる。バカである。

8月末に締切ギリギリで参加表明したオフ会はドルフィンポートのオシャレなイタリアンレストランで。食事もたっぷり、トークもたっぷり。女子8人集まったらね、そりゃぶっちゃけトーク満載だよね。私はホテル泊なので、いろんな人のいろんな話を聞ける機会は本当に貴重なのだ。治療中の体調について、治療を終えてからのこと、金銭的な問題、家族や仕事のこと、再発や転移。体験者ならわかること、体験者でなければわからないこと。内容はハードだが、なぜか誰もが笑いながら話している。不幸すぎて笑うしかないよね、みたいな捨て身の笑いではない。話せる、聞ける、聞いてくれる、分かってくれる、という安心感なのだろうか。それだけじゃないな、単純に、たらふく食べて飲んで、笑ってしゃべって、この時間を存分に楽しんだ感じだ。充実した愉快な時間だった。

オフ会の翌日、診察の時に血液検査の結果を見せてもらう。白血球、増えてんじゃん。ほらねー、ほらねー、しゃべると元気になるって数値でも出てるわけだよ。

とはいえ、抗がん剤後の放射線治療中の身。万全ではない。微熱が出たり引っ込んだり、疲れたりだるかったりする日もある。しかし、同じような症状の人はまわりにもいて、それは「よくあること」なのだと今は知っている。慎重に自分の体調を観察することは大切だが、気にしなくていいことは気にしない。気にしなくていいと知ったことは大きい。私はここでもたくさんの人に助けてもらっている。ありがとう。

 

私は基本的に人見知りなのである。しかしオンコロジーセンターに行ったら、とりあえず「こんにちは」と言えば、ボンヤリしていてもいつの間にか輪に入れる。職場などにありがちな、女同士の後ろ向きで手をつなぐようなブラックな要素は感じられない。生きる事、いかに幸せに暮らしていくかを本気で考え、標準治療を蹴ってきた人たちが集まっているのだ。同類相哀れむのではなく、同志という感じかもしれない。

ウェルカムな空間がそこにある。

ネットだけでは得られないリアルかつ愉快な情報は本当に役に立つ。それ以上に自分を元気にする。

 

念のためだが、治療の選択をすすめているのではない。それは別の次元の話。