普通日記

働くトリネガ、絵描き修行中につき

台風前夜、食欲倍増

第2クールなのである。9月の最後の診察で次回は10月17日からと言われていたので、霧島温泉でご馳走を食べて温泉に浸かってテレビで海猿を見ながらサクっと早割航空チケットを取っておいた。普段から詰めの甘い自分だが、今回は準備万端だな、と思っていた。ところが季節はずれの台風で、しかも10年ぶりの大型とかゆって、日本列島縦断してんじゃねーよ、ばーか、ばーか。前回は桜島の噴火、今回は大型台風。なかなか派手な演出ですこと。

予定変更で1日早く鹿児島入り。家を出るときは寒かったのでコーデュロイの上着だったが、東京駅は湿度が高くてすでに暑い。モノレールから見る空は灰色の重い雲。羽田空港に着く頃には雨が降り出していた。

鹿児島空港着、晴れ。どっちみちコーデュロイの上着は暑い。気温差で鼻炎が悪化しているところに飛行機なんて乗ったものだから、耳がモワっと詰まっりっぱなし。脳みそ崩れて耳から出たか?

まだ治療前なので鹿児島中央駅西口のホテルを取った。荷物を放り込んで、小腹を満たすべくアミュ地下徘徊。そば屋でガッツリ満腹。小腹じゃないし。まだ4時だし。食欲の秋だし!

あちこちウロついて、映画でも見ちゃおっかな~とミッテ10に向かう途中で思いとどまる。朝の7時に家を出て、人混みかき分けて乗り換えを何回もして鹿児島着なのだ。これでも一応乳がんステージ3だから。休もう、休もう、おやつ買ってホテルに帰る。おやつは忘れない。レンコンとひじきのサラダ、コールスローがおやつに分類されるかは疑問だが。1ヵ月ぶりに城山ストアーのお惣菜コーナーを見たら素通りできなかった。

ニュースでは台風の警戒情報を頻繁にやっている。余分な出費はあっても早く来てよかった。しかし余分な脂肪はいかがなものかと。白血球の数値より血糖値を気にするようでは本末転倒なのだ。

 

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ホテルの窓から見えた夕暮れのアミュラン。

中耳炎になる。鼓膜に穴があく。

季節の変わり目特有の寒暖差で、持病の鼻炎が悪化していた。飛行機に乗ったら耳が詰まった。水が耳に入って出てこない感じ。水中生活3日はガマンした。4日目でさすがに陸に上がりたくなった。鼻炎からくる中耳炎に違いない。抗生物質を処方されるはずだが、放射線治療中の自分が服用していいのか判断がつかない。オンコロジーセンターに確認したところ、外用薬はOKだが内服はNOとのこと。やっぱりか・・・。さて副鼻腔炎も中耳炎も外用薬なんてあったっけ?と不安になるが、とにかく耳の奥から深海のゴワゴワ音がするのはもう勘弁だ。もしかしたらネブライザーでしばらく通えと言われるかもと覚悟して、土日もやっている耳鼻科に行ってみる。滲出性中耳炎だそうで。これ、青っ鼻たらした子供がよくなっちゃうヤツ・・・。内服がダメならば、ということで、鼓膜に穴をあけて溜まった浸出液を吸い出され、5日目にして海中から脱出成功。鼓膜って穴あけても平気なのか(驚)台風直撃に続いて中耳炎。こんな小ネタいらないんだけど。

中耳炎にはなったが、他には特に問題なく元気である。上着なしで、歩くと少し汗ばむくらいの鹿児島の気候はとても過ごしやすい。

第2クール、まずは脇で1週間、胸で1週間の予定でピンポイント照射しましょう、と言われている。ピンポイントになると身体への影響も強く出ることがあるらしい。油断してはいけないのだが、抗がん剤の影響が薄れてきたこともあり、うっかりガシガシ歩いてしまう。動悸や息切れはまだ少しある。無理せずにホテルで休めばよいのだが、今回は安さで決めたのでショボい。あまり帰りたくない。フロントの人は親切で部屋は清潔だから文句は言えないのだが、前回滞在のホテルとは全然レベルが違うわけで・・・。

これを書いているのは月曜日。図書館も美術館も博物館も休みだ。行くところがなくて天文館のスタバに居座っている。仕事もせずに時間を持て余している。もし標準治療をそのまま続けていたら、今頃はどうしていただろう。TCの副作用でクタクタになりながら、そろそろ手術の予定が決まる時期だったかもしれない。

妹は最初から抗がん剤の治療には賛成できないと言っていたが、私は受け入れた。それが当然だから、という理由ではなく、少なくともネットや本で調べて納得できることがあったからだ。結果的には途中で逃げたのだけれど。この選択が正解なのかは分からない。後悔していない、とも言いきれない。再発や転移が出たら後悔するのかもしれない。これは抗がん剤と手術のフルコースをこなしていても同じなのだから、どっちが正解なのかは本当にわからない。

ただ、抗がん剤をやっていたら中耳炎どころの不調じゃ済んでいない。月曜の昼間っからスタバでソイラテなんか飲んでいない。オンコロジーセンターの治療を選択するとは、こういうことなのだ。治療費の中には、こういう時間も含まれている。

老化現象はじまる

もしかしてホットフラッシュ?まさかのホットフラッシュ?やっぱりホットフラッシュ・・・。ネロと友達パトラッシュ。ルーベンスの絵を図書館で調べて、えー、こんなムチムチ?とショックを受けた記憶が。ネロ、まさかショックで? ごめんね、バカで。

どうやら更年期障害のスイッチが入った気配。齢46にして、ぼちぼち在庫も少なくなったであろう卵子が抗がん剤によって全滅したと思われる。もともと基礎代謝が悪い冷え性なので汗が出ない。それが最近、妙に顔に汗が噴き出るようになった。フーっと顔が熱くなりスーっと熱が引いていく。寄せては返す波のようなほてり。まさかこの食欲はホルモンバランスが崩れたからか?いかん、またしてもホルモンバランスによる肥満ステスル攻撃だったか。トリプルネガティブはホルモン治療ができない。なので更年期障害と同じような副作用は無縁だと思っていた。しかし本チャンが来たちゃったんだね。やはり抗がん剤が引き金か。こんなところに伏兵がー。FECばかやろー。

髪はしぶとく落ち武者状態であったが、7月25日の最後のFEC(赤い衰弱!)投与後には波平さんかオバQかという数えられる程の髪が残っているだけだった。9月のある日、顔を洗った時に懐かしくも切ない違和感を覚える。あごにひげが1本生えていた。この頃はポヨポヨと頼りなげなまつ毛がずいぶんな勢いで抜けていたので、まだ脱毛は続いていると思っていた。

先に説明をすると、抗がん剤による脱毛は全身のあらゆる体毛が抜ける。個人差はあるが、頭髪はもちろんのこと、まつげ、鼻毛、顔の産毛すら抜ける。

ひげ発見は事件だ。こいつがいるということは、別の場所にも息を吹き返したやつらが存在していてもおかしくはない。ホテルの姿見の前で捜索開始。頭をさわるとザラザラしていた。鼻の中にも充実した世界が。そして眉毛がボーボーになっていた。なぜ気づかなかったのだ。大慌てで天文館の100均に走って眉を整えるべくカミソリを買った。いくら鹿児島だからって西郷どんとお揃いにしておくわけにはいかない。

第1クールを終えて10月初旬。髪は海老蔵くらいになった。そして10月下旬には1センチ程にはなっている。残念なのは白髪が多いことだ。基本的に濃いぃ顔なので、坊主頭はイケてると思う。デミ・ムーア気取りでウィッグを早々に卒業したいのだが、染められるまではもう少し時間が必要かもしれない。

爪は抗がん剤4回分の白い筋が入り、表面がささくれて薄くなっている。ホホバオイルでマッサージをしているが、これからの乾燥の季節には割れて大変かもしれない。爪が弱くなっていると指先に力が入らないので想像以上に不便だ。蓋が開かな~い、あけてくださぁ~い、と可愛く言えるだろうか。がんばる。

治療が進むとともに湿疹まみれ。これはオンコロ友に聞いたところ、放射線治療は血行が悪くなるのでアレルギー体質の人は出やすくなるとのこと。広範囲なのでステロイドではなく乾燥肌用のメンソレータムかゆみ止めでしのいでいる。ふと注意書きを読めば、老人性乾皮症とある。老人性・・・。見なかったことにする。

ろくすっぽ化粧もせずに真夏の鹿児島をうろついていた夏。四十路のお肌に良いはずがない。顔だけエステに行こうかな。放射線バリバリ照射しているからデコルテなんかやったら骨折するかもな。やらないけどね。がん細胞がリンパに乗って飛んだらヤダ。

年を重ねるのは良いが老け込むのはいやだ。がんばる。

それよりも、この先も年を重ねられるようにがんばれよ、自分

Φ5の悲劇。靴下にも穴があく

10月も下旬だというのに日中の気温は25度前後。空気が乾燥しているので多少の灰が混ざっていても風が爽やかだ。時々、照射している胸のあたりに突き抜けるような痛みがあったり、肩から首にかけての筋肉にこわばりを感じる。しかし前回のような倦怠感も微熱もない。体調は良い。具合が悪くないので2週目の血液検査を忘れてしまった。正しくは、食べ歩きに忙しくてそれどころじゃなく・・・(すいません、すいません)白血球が減少した時の、あの説明しがたいだるさを身体が覚えている。たぶん大丈夫。だと思う。つーか、もう治療しちゃってるし。んはははは、笑っとけ、笑っとけ。元気ならいいじゃないか。

治療中は、技師さんたちがテキパキとマシンを操作する間、台の上に乗ってじっと動かずにいるだけである。いつもどおり何事もなく治療を終え、技師さんに「はい、お疲れさまでした」と起してもらう。靴をはく時に、ふと見てはならぬものを見てしまった。つま先である。紺のしましま靴下の先に、ナチュラルな肌色がチラリ。およそ直径5ミリ。

こここここれは、もしや、穴あいてますか。穴ッスね。まごうことなき穴ですね。うぎゃーーーーー、穴あいた靴下で治療を受けてたのか。これを技師さんが見ていないはずがなく・・・。

もし治療前に発覚していたなら、私はきっと自虐ネタとして笑いを取って一件落着させてから治療に挑んだはず。しかし事はすでに終え、走る技師さんは次の人を迎えるべくスタンバイしている。もはや手遅れだった。なんという失態。せっかくのネタを・・・ではなく、乙女の恥じらいも吹っ飛んだ。穴があるなら入ってやってもいい(なぜ上から目線?)