普通日記

働くトリネガ、絵描き修行中につき

乳がん患者の心得(3)

乳がん本には主治医とのコミュニケーションが大切だとか、インフォームドコンセント

だとか、自分で納得できる治療を選択するためにはナントカカントカ、いろいろと

患者としての心得が書いてある。一応、読んだ。もはや「先生様の言うとおり」という

時代ではないのだな。しかし、これは逆に考えたら、口下手だったり人見知りだったら

不利じゃないのん?主治医と仲良くなれなかったらヤバくね?と心配になる。

告知されてからすでに半月、マンモとエコーの検査後に主治医の初めての診察。

よろしく、と手短な挨拶と、画像を見ながら状態を伝えられる。あまり言葉は頭に

入ってこない。PCに入力される「局所進行乳がん」「ステージⅢ」「リンパ節転移」

の文字を見て、予想していたよりも悪いのだと知る。

すぐに手術ができないので術前治療がいいでしょう。次々と伝えられ内容が末期に

近づいていく。目の前で慌ただしくMRI、CT、PETの検査日が決まっていく。

末期1歩手前か。遠隔転移があったら末期だな。完治どうこうじゃないのだな、と

ぼんやり考えるのがやっとだった。

主治医はいかにも学者な雰囲気で、こちらから何か質問をするような雰囲気がない。

乳がん本にあったコミュニケーションやら相性の良し悪しはどうしたものか。

ここはひとつ捨て身のギャグでもかましたほうがいいのだろうか。つまみ出されても

困る。しかし、どうなんだろう。待合室には人が溢れ、順番がまわってきたのは

予約の3時間後だった。これだけの人を診ているのだ。患者個人の内面までケアしろ

というのは医者である前に人としてキャパオーバーじゃないのか。必要な情報は

できるだけ簡潔に質問しよう。相手はプロだ。こちらの要求もストレートに伝え

られるように心構えをしておこう。回答に対して、それをどう受け取るかは自分の

裁量だと思うことにする。(と、この時は思ったのだが、まさか2か月以上もご無沙汰

するとは予想外だった)

 

撮りなおしたマンモグラフィには写っていなかった。しこりは形がぼんやりで

わかりにくかった。腫瘍マーカーも基準値内。おまけに血液検査は健康そのものだ。

そこらの不摂生な飲んだくれ中年に自慢してやりたい。

告知からずっと、自分の健康を過信した、油断した自分は大バカだったと後悔ばかり

していた。自業自得だと思っていた。しかし、これはもう自分を責めたら気の毒だ。

どんなに健康に気をつけて、ライフワークとする仕事や趣味があって、充実した日々

を送っていたとしても、がんなんて、なる時はなるのだ。世の中にはとんでもなく

不摂生をしていても平気な人もたくさんいる。不公平だな~と思うけれど、

ここはひとつ、そういうこともあるよね、くらいに受け流しておこう。

「原因になったかもしれない悪い事」をどんどん掘り下げてまで後悔しなくても

いいと思う。とはいっても後悔するよね。後悔先に立たずなんだけどね。でも、ま、

いつか役に立つから。後悔ポイントは改善ポイントとして自分メモしておこう。

治療は「先生様の言うとおり」だけではなく、自分でもできる事があるに違いない。