普通日記

働くトリネガ、絵描き修行中につき

あれこれ資金繰り「ホテル編」

治療中のホテル宿泊も長期になるので資金繰りも楽ではない。UASオンコロジーセンターは自由診療なので治療費だけで車1台分だったりする。滞在費や食費などの諸経費を含めると、個人差はあれどターボエンジン搭載の軽自動車からプリウスくらいはかかる。私は普通の田舎の事務員なので普通に貧乏だ。都会のキャリアとは立ち位置が違う。正直に言ってしまえば、庶民は保険を使って入院したほうがいいと思う。だけど私はホテルを選択した。

定年退職後の生活や老後の為にセコく貯めていた。年金なんて不透明なものに寄り掛かれない不憫な世代なんだもの。独居老人にはなっても、がんになるとは思っていなかった。しかも5年生存率30%以下は想定外だった。こうなった以上、墓場まで貯金なんぞ持っていったところで意味がない。ないかもしれない老後より、生きてる自分に使っとけ!と思ったわけだ。子供がいたら少しでも残そうと考えたのだろうが、なんつってもね、子なしシングル40代だもの。決して投げやりになっているのではない。自分で稼ぐ。自分で使う。ただそれだけのこと。

まぁ、そうは言っても今回で使い切ってしまったので、預金残高は潔い数字になっている。清々しいくらいだ。万が一、王子様が現れて結婚詐欺なんぞに引っかかっても無い袖は振れない。

万が一よりも少し高い率で、1年くらいで再発しちゃった場合、残念だがUASオンコロジーセンターで治療ができるかも分からない。無い袖は振れないのだ。完治は厳しいが、できれば癌細胞には最低でも10年くらいはおとなしくしていてもらいたい。その間に働いて稼ぐ。手術の後遺症がない分、働きやすい。

さて、本題のホテル編

ホテル選びのポイントはそれぞれだと思うので、特に参考になるような情報発信はできないのだが、あくまでも私感として読み飛ばしてほしい。

UASオンコロジーセンターに事前に相談すると、セントイン、東横イン天文館2、ドーミーインのいずれかを紹介してもらえる。私はのちに入院組から大笑いされることになるのだが、セカンドオピニオン時に植松先生に直接質問した。鹿児島ではグルメや観光を楽しみたいのでホテルがいい。皆さんどうしてますか?とぶっちゃけ聞いてしまった。受付に聞いてみて、と言いつつも、ここは安い、これは無難で普通、温泉付き1ヵ月タイプはウチの通院用に設定されたようなものかな、という感じで、かなり具体的に教えてくださいましたよ。セカオピの貴重な時間を私はいったい何やってたんだ・・・と今ではセルフツッコミしたい。

第1クール 8月19日から9月22日までの宿泊先。

  • 城山観光ホテル  初めての鹿児島記念に1泊
  • ドーミーイン 1ヵ月マンスリー朝食付き 高見馬場
  • レム鹿児島 友人とツイン1泊 天文館
  • 城山観光ホテル レディスプラン ツイン1泊
  • 霧島観光ホテル 霧島温泉 朝夕付 1泊

第2クール 10月15日から11月3日まで

第1クールに関しては治療期間中の宿泊はドーミーインのみ。他は観光。第2クールであちこち転々としているのは、台風で前乗り、後半は治療最終日を確認していなかった為に急きょ延長。連休でプチ難民。

天文館周辺、治療中の宿泊先選びの対象になりそうなホテルのレポートは以下のとおり。

セカンドオピニオン翌日、速攻でドーミーインを予約。ベッドがシモンズ堅め140cmで寝心地抜群。部屋が広く長期滞在でも圧迫感なし。空の冷蔵庫あり。タオル等は毎日交換だが清掃は1週間に1回。ここを気にする人は多いが、私はスーツケース広げっぱなしのズボラなので、むしろ気楽。温泉は無色透明。部屋はシャワーのみ。コインランドリー無料。洗濯物を干すスペースあり。朝食バイキングは品数が多く充実している。ただしマンスリープランじゃないと少し宿泊代が高いんだよね。

第2クールはα館で11泊。早めの予約でかなり安く泊まれる。フロントの人がとても親切で丁寧。部屋は清潔。窓から照国神社の鳥居が見え、通りから少し奥に入っているので騒音もなく落ち着いた場所。オンコロジーセンターに近い。天文館にも行きやすい。おやつ買いすぎる。照明が黄色く暗めなので本を読むのは不向き。空調設備が古いので音が大きい。冷蔵庫が冷えない。真夏の長期滞在はエアコンと冷蔵庫がネックになるかも。備品類は必要最小限。ポットは貸出。安いからね、贅沢言ったらダメだけど不便はない。

ホテル法華クラブは思っていたよりアタリだった。柔らかめ140cmベッドなので、その分だけ床面積が狭くスーツケースを広げると目一杯だが、部屋そのものは狭くない。LEDシーリングライトで明るく、PC作業のしやすそうな机。温泉ではないが大浴場あり。備品、アメニティはそこそこ充実。朝食が良い。野菜がたっぷり取れる。朝から食べすぎる。天文館には少し歩くが高見馬場電停が目の前。コンビニ近い。窓からアミュランや電車通りを眺めるのも悪くない。

レム鹿児島。(シャワーのみ女子2人ツイン)とにかくスタイリッシュ。機能優先ではなくオシャレ仕様。アメニティがピンで留まっていたりシャワールームがスケルトン(笑)1階にタリーズ、2回巳八の蒸しビュッフェは90分食べ放題。やっちまえー!

エースイン。さすがアパ系列。いろんな意味で予想どおり。必要なものは一通り揃っているシンプルなビジネスホテル。窓が開けられない。開くけど隣のビルの壁しか見えない。空調の温度設定ができない。コインランドリーは屋外で駐車場の片隅。庶民的な朝食サービスあり。ホテルは寝るだけ、と割り切る人向きかも。

霧島温泉と城山ぜいたくプランは抜きにして、朝食、コインランドリー、大浴場がある、という条件で決めていた。体調管理の為、朝食は必ず取りたい。平熱が35度台なのでお風呂で温まるのも大事。今回、これ以外に感じたのはシーリングライトがいいってこと。しっとり暗いほうが落ち着きそうなものだが、照明が暗いと気分も暗くなるらしい。穴のあいた靴下をチクチク縫ったりするにもシーリングライトのほうが都合がよい(謎)

鹿児島市内、特に天文館周辺はたくさんのホテルがある。長期滞在になるのでフトコロ具合と自分基準でうまく折り合いをつけるしかない。とはいえ、基本的にはUASオンコロジーセンターで紹介してもらえる3つのホテルは選びやすく、条件としては揃っていると思う。そして以前にも記したが、ホテル滞在中の体調管理は綱渡りだってことを忘れてはいけない。放射線治療にも副作用はある。がんになる前の自分とは違うのだ。

とかナントカ言って、さんざん食べ歩いて食い倒れ鹿児島ツアーを決行したのは誰だ、私だ、道楽三昧。フトコロ具合が寒すぎる。

あちこちランチ

鹿児島滞在2週目。ひとりランチ行脚もそろそろネタ切れかと思い始めた頃である。ふと、9月まで同じ時期に治療をしていた彼女がそろそろ鹿児島入りしているのではないかとメールしてみる。当り!ごはんしようと提案する。第1クールで一緒だったみんな、元気だろうか。たぶん元気だな。明るくておしゃべりで、おしゃべりで、おしゃべりで、したたかにしなやかに、意志は強いが情の厚い人たちだもの。UASオンコロジーセンターで知り合った友人たちの印象である。みんなガンなのに愉快な人ばかり。

ランチも2人になるとまた趣向が違ってくる。ひとりで入るのに躊躇していた店に行かれる。まずは寿司。前回は真夏で抗がん剤で痛めつけられた上に放射線だったので、さすがに寿司を食べる勇気はなかった。まぁ、今回だって白血球の値は落ちるのだか、肉より魚派の私はもう限界なのだ。寿司なんていつ以来だ?4月か、そうか4月だ。治療前に行っとけー!とぽんちゃんが新潟まで連れていってくれたのだ。寿司のために県外。海のない所に住んでいると不便よねー。

あちこちのオンコロブログに登場している「喜鶴寿司」はカウンター席を確保すると目の前で握ってもらえる。880円でたっぷり楽しめる。思わず「うまい!」と雄叫びあげるのも致し方あるまい。

翌日は野菜をたっぷり取るべく、レム鹿児島2F「巳八」で。ビュッフェスタイルで好きなものをセイロで蒸してたらふく食べまくる。飲茶ありカレー・パスタあり、デザートまである。一見して健康志向な品揃えだが、食べすぎるのはいかがなものか。いや、あの状況で自制できる女子がいるだろうか。無理!グルメサイトでクーポンをGETしてから行くがよろしい。

ホテルのロビーで治療までの時間調整。そこで友人がバッグから取り出したメモ。そこには何やら細かく書き込まれたタイムテーブルが。「行きたいランチ店リスト」だった。日数が足りなくて~、全部は難しいかな~、とパズルを解くように治療時間とすり合わせている。本人いたって真剣なのだが・・・すまん、ちょっと笑っていいッスか。念のためだが、私たちはガンの治療中である。

そして、これを書いている日の昼ごはんは「いちにぃさん」の黒豚とんかつ定食だったりする。ミルフィーユのように何層にも重ねた黒豚もも肉は柔らかく、余分な脂がないのでさっぱりと食べられる。豚汁がまた野菜たっぷりで量も多い。ごはん半分にしてもらうのを忘れたが、気が付けば完食。しつこいようだがガンの治療中である。

第1クールでは早歩きすれば息切れ、階段3段でグダグダ疲れ果てていたが、第2クールのこの普通っぷりはどうなんだ。折しも食欲の秋が到来中。馬も肥ゆるが自分も肥ゆる。デンジャラスな季節だ。

全国的な傾向なのかは分からないが、鹿児島には自然食とかオーガニックとかマクロビオテックとか、健康食と呼ばれる料理を出す店が多い。城山の地球畑にじのたね、レム鹿児島の隣のキッチンキャベツはそれが売りなのでオンコロ女子の御用達。巳八は蒸し野菜、夜行杯は焼き野菜。マルヤガーデンズ内のカフェやレストランでも何気に五穀米だったり、ハンバーグが豆腐やレンコンだったりする。オサレなカフェ飯に味噌汁がついていることもある。外食ばかりではあるが、心がけひとつで野菜はたっぷり取れるはず。

鹿児島での治療中、食事をする店には困らない。ガイドブックやネットで探すのもいい。入院組の人たちは先輩たちから情報を引き継いでいたりするので聞いてみるのもいい。そんなこんなで「行きたい店リスト」を握りしめて悩む、なんてことにもなるわけだ。

治療期間は長いようで意外とあっという間に過ぎてしまう。神様がくれた休暇。どう過ごすかは自由なのだ。